2018/09/10
建設関連分野におけるドローンの用途拡大について
防災分野でのドローン技術の開発が進んでいる。
近年の需要として、一般的なドローン活用による測量や工事管理等のICT(情報通信技術)分野に加え、
特殊な用途での活用に社会的な期待が寄せられており、各方面での用途が拡大してきています。
㈱フルテックが関係する特殊な用途として、
1) 橋梁等のインフラ長寿命化分野における点検監視分野
2) 近年増加傾向にある異常気象による災害調査分野
3) 火山活動などの異変予知などの地球物理探査関連分野
などがあげられます。
株式会社フルテックのドローン技術について
㈱フルテックでは、4年前から、特殊用途に供することを目的として、富山県新世紀産業機構や富山県
産業技術研究開発センター機械電子研究所などの支援を受けながら、ドローンの自社開発を進めてきまし
た。フルテックは、橋梁などの構造物調査設計を主な業務として7年前に設立、著名な研究者や技術者を
中心に構成し、全国展開しています。中でも、環日本海に立地する地域での業務に特徴があり、SIP(内閣
府戦略的イノベーション創造プログラム)に参加するなど、鋼構造物やコンクリート構造物の材料劣化診断
技術や構造耐力復元技術に特徴がある建設コンサルタントです。
㈱フルテックが特殊用途用に開発するドローンの多くはマルチローター(6~8軸)タイプであり、モーター
最大間隔0.9~1.1mの大型機に特色があります。現在、系列子会社により部品調達~本体の製作を手がけ、
特殊な用途が要求される市場にあわせてカスタマイズした機体を提供しているほか、空撮業務やオペレー
ター指導業務などにも対応しています。なお、機体の販売やメンテナンスも実施しており、価格帯は、1機
あたり500万円程度が中心となっています。
㈱フルテックの開発したインスペクター・アルファーシリーズの主な特徴は以下の通りです。
1) 橋梁点検型ドローン(INSPECTOR αⅠ)
「橋梁点検型ドローン」による橋梁調査技術が実用化段階へ移行。
㈱フルテックが自社開発してきた「橋梁点検型ドローン」は、橋梁点検の需要増大に伴う費用削減
を目的として開発されたもので、全方向での暗視撮影機能や測距機能、ならびに、乱流域での振動制
御機能に加え、重い資機材を上部搭載した上で高度な機体安定性を実現しています。機体には高性能
カメラを搭載し、新たに開発された画像処理技術を適用することにより、撮影距離5mからの空撮画像
において0.20mm未満のひび割れの数値計測を可能としました。国内の橋梁点検用に開発されている
ドローンのほとんどが近接撮影を目的とするタイプなのに対し、遠望撮影により全体~局部診断を可
能にする手法は国内でも例がないことから、橋梁以外の分野でも活用が期待されています。
国内で維持管理が必要な橋梁は、70万橋とも80万橋ともいわれており、供用上の公衆災害を防止す
るため、全ての橋梁に対して5年に一度の点検が義務づけられています。これらの維持には、膨大な費
用と労力がかけられており、効率的な点検方法が模索されていることから、今後、本技術分野での全国
的な展開が急速に進むと考えられています。
2) 全天候専用型ドローン(INSPECTOR αⅡ)
「全天候型ドローン」が北海道における緊急防災管理で活躍。
大日本コンサルタント株式会社・株式会社フルテック協同グループが開発した「全天候型ドローン」は、
国土交通省が自然災害の即時監視を目的として実施した「革新的河川管理プロジェクト」において、強風
降雨域での飛行実証試験をクリアし、国土交通省が定める発注仕様を満たすものとして、今年3月に北海
道開発局帯広開発建設部が道内で初めて採用され、今年度から、十勝川流域の防災管理に活用され実績を
あげています。
㈱フルテックが開発を担当した機体では、空気抵抗性や転倒安定性を向上させることにより、風速
15m/secの強風降雨時における遠隔自律航行が可能です。また、100m上空から地上分解能3mmの画像
を、2.5km圏内まで同時通信できる機器を搭載しています。これまでのドローンでは、強風時や降雨時の
安定飛行は困難でしたが、自然災害における状況把握は一刻を争うため、今後の防災分野において重要な手
段となると期待されています。
㈱フルテックでは、新たに、国土交通省中国地方整備局浜田河川国道事務所の「全天候型ドローン」機体購
入案件を受注したことを機に、富山県内での製造を本格化する計画です。
(参考:強風とは平均風速15m/sec以上をいい、暴風とは平均風速25m/sec以上をいいます)
3) 物理探査型ドローン(INSPECTOR αⅢ)
国内で初めて「物理探査型ドローン」による空中磁気マッピングに成功。
㈱フルテックは、北海道有珠山で行われた実機航測において国立研究開発法人産業技術総合研究所
(産総研)が実施し、大日本コンサルタント㈱が受注した「ドローンを活用した空中磁気探査の展開」
において機体開発及び運航を担当し、国内で初めて「物理探査型ドローン」による空中磁気マッピン
グに成功しました。
火山活動の監視や局部的な地磁気の変化を正確に把握できることから、これまで火山活動予知や危
険地域の物理探査などに用いられてきた、徒歩観測やヘリコプター観測などの手法に加え、自由度や
安全性を大幅に改善した新たな技術として、国内外での活用が期待されています。